第33回「求められるEVをシステムとして開発する姿勢」

 本年も年初1月に恒例の「インターネプコン・ジャパン」が開催された(「国際カーエレクトロニクス技術展」併催)。インターネプコンは今回で40回を数えるエレクトロニクス関連の集大成的な展示会だが、今回は新たに電気自動車(EV)関連への傾斜を強めているのが注目された。

 各社からEV試作車やEVの心臓部ともいえるインバーター製品などが出展されていた。気にかかるのは、駆動系を従来の内燃機関から電気モーターに変えれば済むというだけの話ではなく、人間を乗せる車としての性能、乗り心地、安全性などが十分に吟味されているのかという疑問である。自動車メーカーはこれまで動力源を含めた車全体をシステムとして開発、性能アップや安全性の向上を競い合ってきた。現在のガソリン車はその頂点とみなすことができる。

 その現行の車から内燃エンジンを取っ払い、モーターに変えても従来の性能、安全性は担保されるかというと、そうはいかない。EV用のモーターなどの開発と人が乗る商品としての車の開発とは別物なのである。

 さらにEVのモーターを駆動するための中央制御ユニットに組み込まれるソフトウェア、それに係るモーターに最適電流を供給するインバーターなどといった部分は、安全性を十分考慮した開発が必要となる。

 最近「ISO26262」なる標準案を耳にするようになったが、この対象はEVである。電気関連標準化を手掛けるISOが付されていることからお判りのように、この標準はEVのエレクトロニクス関連に対するものである。付足だが、従来のように個々の部品にまで高い信頼性を要求する方向から、ISO26262では、社会が容認できる安全性が確保できればよしとする考え方に変わっている。

 それはソフトウェアがEVシステムで大きな比重をもつことによる。従来の自動車では、ハードウェアであるひとつひとつの部品の高信頼性を積み重ねることによって全システムの信頼を高めるという方針をとってきた。

 しかしそこにソフトウェアが加わってくると考えは抜本的に変わってくる。バグがまったくなく100%信頼できるソフトなんてあり得ない。

 これからEV開発を試みる際、本来の乗り物、自動車としての性能、安全性を重視した開発を進めるばかりでなく、ISO26262に示されるような新たな視点で車システムを制御するソフトウェアを開発するという姿勢が極めて重要となる。

 インバーターの開発にしても、その一環として製品化を進めることにつながるのではないだろうか。

 インバーターに関しては、それを構成する昇圧回路、平滑化コンデンサー、ダイオードを含む主役のパワー素子、それぞれの小型化、高性能化のベースとしてさまざまなセンサーとの協動を効率よく行わせる一段の工夫、使い方が求められる。パワー素子の高性能化ばかりに目が移りそうだが、ベンチャーにとって腕がふるえる分野でもある。

(多摩大学名誉教授 那野比古)