第28回「初めてのアジアのVC協会一堂に会す」

 11月、東京・お台場の東京国際交流館で、アジアでは史上初、7カ国・地域のベンチャーキャピタル(VC)協会が一堂に会する『アジアVCネットワーク・フォーラム』(AVCNフォーラム)が開催された。VECも後援するこのフォーラムへの参加は中国、北京、香港、台湾、韓国、それに日本のVC協会で、参会者は2日間で延べ500名を数え、関係者の関心の深さをうかがわせた。

 あいさつに立った日本ベンチャーキャピタル協会(JVCA)の呉雅俊会長は「イノベーションの夜明けに向かってAVCNの活動を毎年持ち回りで継続実施を」という力強い提案がなされ、またVECの市川隆治理事長からは、「アジア地域におけるベンチャー企業の立ち上げ、育成のためのリスク資金の幅広い調達、健全な成長を支援するためのハンズオンでの協力」についての呼びかけがあった。

 このフォーラムは「アジア地域でのVCのクロスボーダーな投資活動を促進するため、年初頃から経済産業省を中心に構想が温められ、JVCAの協力の下、手分けして関係VC協会を説得して回りようやく実現したもの」(市川理事長)。

 この会議では招聘されていた欧VC協会(EVCA)のディレクターからは、ベンチャー企業(VB)やVC関連の用語や定義の統一、さらにはそれをベースとした汎世界的なデータベースの構築という具体的な提言がなされ注目を浴びた。トランスボーダーで円滑な投資資金の移動を促すためには、各国の共通理解の基盤に立ったVB、VCに関する情報の集積と公開が不可欠との前提があるからである。各国における法制上の相違点を相互理解しておくことも極めて重要なテーマとなる。

 わが国のVCは、国内のIPO事情の悪化から、投資先を海外に向けるケースがふえているが、これを逆の見方をすれば、円資金がアジア、ひいては世界のベンチャー企業育成へと大きな一歩を踏み出す絶好の機会とも受け止めることができる。

 一方ではわが国のベンチャー企業の中には、国内ではなく、シンガポールの証券取引所に上場しようという動きが出るなど、ベンチャー市場には国際化の波が押し寄せているといっても過言ではない。

 ところで参会者の中から「リマーカブル」と拍手が湧いたのは市川理事長が英、仏、中、韓の各国語でショート・スピーチがなされた時。ちょうど同じ月、横浜ではAPEC(アジア太平洋経済協力会議)が開催されたが、参会者は口々に「VCのAPEC版だね」との声が上がっていたのが印象に残る。

(多摩大学名誉教授 那野比古)