第18回「共通の認識の上で語ろう『エネルギー密度』」

 最近各地に出かけると電気自動車(EV)が話題になることが多い。今や世をあげての脱石油ブーム。エネルギー源として電池、バイオエタノール、風力、太陽光、原子力、地熱などが新たな脚光を浴びている。

 だがこのブーム、足元も見ずにただ浮かれているだけで済むものだろうか。そこに大きな落とし穴はないのだろうか。

 例えばバイオエタノール。現在米国ではトウモロコシ、コムギなど食糧用の穀物で生産されているが、コメなども含めた全世界の穀物生産量は21億トン。このすべてを現在の技術でバイオエタノールに変換したとすると採れる量は石油換算で4億トン。人類が1年間に消費する石油は約39億トンといわれているから、わずかな燃料を作って全人類は餓死という事態すらあり得ないことではない。

 自動車を電池駆動にする動きも盛んだ。ただここで絶対に見過ごしてはならないのは、従来のガソリン車でいえば満タン容量、航続距離である。これは別名「エネルギー密度」と称される。そこで現状での各エネルギー源の1㎏当たりのエネルギー密度(概算:ワット時=wh単位)を比較してみると、

ガソリン 12,000wh/kg
リチウム・イオン電池 100wh/kg (先端開発段階で200wh/kg)
ニッケル水素電池 70wh/kg
鉛蓄電池 35wh/kg
高圧(200気圧)水素 165wh/kg

となる。
 近く実用化が期待されている未来の電池では

リチウム・イオウ電池 1,000wh/kg
リチウム空気電池 5,000wh/kg

が可能と見込まれている。それにしてもエネルギー密度から考えると、ガソリンを代替するというのにはお粗末すぎる。

 成田・ニューヨーク間の飛行で約100トンのジェット燃料が消費されるといわれている。かりにリチウム・イオン電池を用いた電気飛行機を実現しようとすると、電池だけで千数百トンの重さとなってしまい現実的な話ではない。それに現在、リチウム・イオン電池は1㎏当たり15万円という極めて高いコストになっている点も忘れてはならない。

 このような現実を踏まえた上で、つまり共通の認識に立ってEVなどを議論する必要がある。実はまたこの視点の中からベンチャー企業が担うべき新たな技術分野、新たなビジネスモデルも見えてくる。

 ついでながら太陽からは全人類が1年間に消費するエネルギーがわずか1時間で地表に降り注いでいる。ここにも次世代を考える大きなヒントがかくされているようである。

(多摩大学名誉教授 那野比古)