第17回「今後世界の標準機器に!(株)ライフの口腔水分計に製造販売承認」

 6月はじめ、(株)ライフ(越谷市)の古川誠社長からプロアクティブな連絡が届いた。同社が開発していた口腔水分計(製品名「ムーカス」)が厚生労働省より薬事法にもとづく医療機器製造販売の承認を受けた。同製品は先端のセンサー部を舌の上など口腔内の所要部分に押し当てることによって、瞬時(約2秒)で水分率が計測、表示されるというもの。

 口腔乾燥症、いわゆるドライマウスについては、老化やストレス、薬物の副作用などにより唾液の分泌が低下、口腔内が乾燥して虫歯や口内炎、歯周病の原因となるほか、摂食や嚥下の障害、発声しにくいなどの障害を引き起こす。慢性的な口腔乾燥はシェーングレン症候群や関節リウマチの原因になるともいわれている。従って口腔内のケアは極めて重要な課題であり、新潟、鶴見、日本歯科の各大学、社会保険中央総合病院などに相次いで口腔乾燥症外来が開設されるに至っている。

 ところがこれまで口腔内の乾燥症、つまり水分を測る客観的な方法がなく、これまではガムや脱脂綿の咀嚼で唾液の量を測定していたが、時間もかかり、診断基準としては問題があった。

 そこに現れたのが(株)ライフの「ムーカス」というわけだが、この企業はVECがかつて実施していた企業診断プロジェクト「サポートウェア」への応募企業のひとつであった。サポートウェアには多くのベンチャー企業の応募があり、その中には将来性が見込まれる企業も少なくなかった。同社の場合は、医学器械としての承認が得られない限り医療現場で口腔乾燥症の診断に用いることは難しく、これが事業化への大きなボトルネックとなる惧れがあった。一般に医薬品や診断機器の分野ではすばらしい成果が予想されるにもかかわらず、この承認や認可の壁にぶち当たり早急な製品化が阻害されるケースが少なくない。

 ライフの場合も、「ムーカス」の開発に着手したのは2002年、そして製造販売の承認を求めて医薬品医療機器総合機構(PMDA)に申請したのは2007年である。その後10回にわたるPMDAとの面談(プレゼンテーション)、差し替えや回答書の提出などを経てやっと本年6月2日、管理医療機器(クラスⅡ)として製造販売の承認を得るに至った。同社のすごさは、このような口腔乾燥症を測定できる機器はこれまでにはなく、正式に商品化されれば、特許を武器に世界の巨大なマーケットに“標準品”として打って出ることができることだ。筆者が高く評価してきたのもこの点だ。さらにはpH値や細菌の測定などで一段と付加価値をつけられる可能性もある。

 この事例が指し示すものは、先進的市場が待望していると思われる製品に関しては、決してあきらめず、信念を貫く姿勢だ。長いPMDAの審査期間中、同社もむろん財務的に苦しい時期にも直面している。しかしそれを、歯をくいしばって切り抜けた。特筆すべきは同社が入居中のビルのオーナーが資金を提供している点である。支援者の輪のひろがりはこの製品のすばらしい将来性を暗示している。

(多摩大学名誉教授 那野比古)