第10回「ギザギザをならす~先端中小企業の新たな試み~」

 11月初め、東京で東京国際航空宇宙産業展が開催された。参加したのは286の企業、団体。ここで非常に注目されたのは、さまざまな地域の中小企業グループが航空産業への進出を真剣に考え始めた点である。

 航空産業は世間では最先端技術のかたまりとみられている。ところがわが国では、その中核となる航空機メーカーの製造工程が極めて前近代的な姿のまま放置されているのだ。その姿がノコギリとかギザギザと呼ばれるものである。

 ひとつの部品を例にとってみよう。材料を仕入れ選別し、切削、研磨、表面処理などそれぞれの加工が、それぞれ別個の下請けメーカーに発注され、検査後の部品はそれぞれいった航空機メーカーに戻ってくる。この工程を眺めてみるとまるでノコギリの歯。ひとつの部品が出たり入ったりまた出たりのギザギザ模様を描く。これはひとえに部品ばかりでなく、その組立品であるサブユニットなどについても同様なギザギザ工程で進められている。航空機メーカーが“ノコギリ屋”と称される由縁だ。この不合理を解消しようと立ち上がったのが各工程で腕に自信を持つ中小企業群である。ノコギリのギザギザをなくし、ひとつのサブユニットにまで組み立てて納入しようという動きだ。これにより期間、コストが半減されるという予測もある。共同受注体として手を挙げたのは、岡山県の「ウイングウィン岡山」や大阪府の「OWO」(次世代型航空機部品供給ネットワーク)などはそのはしりだ。今回の航空宇宙産業展ではこの動きが全国に広がった感がある。青森・岩手・京都・長野・新潟・福島・宮城・山形・山口の各県、京浜・三遠南信・周南・東三河などの各地域、さらには東京板橋区・相模原・各務原・名古屋などの市区までもが手を挙げている。

 中小企業には伝統的な下請けオンリー思考では発展も未来もない。大企業の世界を眺めてみると、そこには不合理なプロセスが山のように転がっており、大企業もそれに気が付いていながら、自らその解決策を積極的に見出せないでいる。この解消は、巨大なマーケットだ。ただいくら腕がいいといっても中小企業1社で取り組める話ではない。そこに現れたのが、これまでみてきた中小企業群による技術ネットワークの提案である。ソリューション・ビジネスという言葉が最近流行っているが、これはITの世界の話だけではない。大企業が抱える不合理を技術ネットワークで解決するという中小企業によるものづくりソリューション・ビジネスが存在することも忘れてはならない。

(多摩大学名誉教授 那野比古)