第8回「勝負どころは隠れた一品」

 最近のエコ・ブームで、バイクを電気モーター駆動にしたいというビジネスが脚光が浴びている。何せ燃費がガソリンに比べて10数分の1になるというのは魅力だ。ガソリン・エンジンの部分をモーター・ユニットに取り替えることが出来たら、巨大なニュー・ビジネスが拓ける・・・ベンチャー企業志向の若者にこう考えている人が多い。ただ問題は、ガソリン・エンジンを単にモーターに変えるだけで済むのか、という基本的な点には気付いていない若者も多い。というのは、モーターの定格出力が600W以下でないと原付として認められないと言われているからである。ちなみに、原付に搭載されているガソリン・エンジンは定格1480Wはある。2馬力だ。

 600Wのモーターに置換しただけでは速度と力のバランスをとるのはまず難しい。どうしてもミッション(変速機)が必要になる。バイクには無段変速機があるではないかという人もあろうが、これには300Wのエネルギーが必要という。出力600Wの半分をミッションにとられてしまうというのは、いかにも不効率。

 実は、ベンチャーの真髄はこの部分にある。熊本大関連のベンチャー企業、オーシャンエナジーテクニカは、多くても40Wほどしか食わない2段式の変速機構を独自に開発、これをベースに電動バイクの製造・販売に踏み出している(スペックは、いまのところ鉛バッテリーで1回のフル充電で80km、最高速度は50km/h)。価格は、約20万円というが、高性能なリチウム・イオン電池ではなくあえてローテク鉛電池を用いているのはコスト引き下げのためだ。しかし航続距離が80kmあれば、通常の配達業務などでは何ら支障はない。

 ベンチャーの腕の見せ所は、このような隠れた一品の開発にある。誰でも思いつくようなアイデアにあって、誰でも製品化できないところを衝く ― さすがベンチャーと感嘆される由縁はここにある。

(多摩大学名誉教授 那野比古)